「クルマ離れが叫ばれて久しい日本では、単純にクルマのデザインや内装がかっこいいからという理由で売れる時代ではありません。乗っているだけで人が振り向くようなタイプではないセダンはなおさらです。
これからはモノ消費よりもコト消費に訴えかける売り方をしなければなりません。つまり、そのクルマに乗ると何ができて、どんなカーライフが送れるのかといったユーザーへの具体的な提案が必要なのです。
ホンダも2013年の新型アコード発売時に『セダン愛。』という広告コピーを打って国内向けセダンの強化を図ったことがありましたが、あまり浸透しませんでした。やはりセダンの購入動機や実用性がユーザーに伝わらなかったからだと思います」
さて、月販目標2400台と強気の数字を掲げたカムリは、「もう一度セダンを輝かせたい」と意気込むトヨタ専務役員、吉田守孝氏の言葉通りとなるか。ジャーナリストの福田俊之氏はこういう。
「購入層の中心は、1980年代にセダンに乗っていた50代以上のオジサン世代になるでしょう。価格も329万4000円からと決して安くありませんし、何よりもその世代は、セダンに郷愁を感じている人が多い。子どもが大きくなって夫婦2人の生活になれば、ワゴンやミニバンといった車種は必要ありませんからね。
ただ、トヨタのセダンを買うにしても、カローラでは小さくて物足りないし、かといってクラウンやレクサスは高嶺の花。そんなユーザーに向けて、マークXやSAIを凌ぐ中型セダンの上級ブランドとして定着させることができるかが、セダン復権の行方を占う試金石になるでしょう」
ライバルメーカーでも、今秋にはホンダの6年ぶりとなるシビック登場に続き、マツダアテンザ、日産スカイライン、ホンダアコードなどのセダンもモデルチェンジやモデル追加が噂されている。もちろんメルセデス・ベンツやBMWほか高級セダンのラインアップも拡充される。
逆境をバネにした新時代の「セダン戦争」が幕を開けた。
■撮影/井元康一郎