今年5月、岐阜県のとある街に住むAさんが、自宅の庭に友人を呼んで、バーベキューをしていたところ、隣に住む男性が、「うるさい!」と刃物を持って乱入。Aさんは腹部を刺され、死亡した。こうした隣人トラブルが原因の事件は後を絶たない。近隣トラブルに詳しい、みらい総合法律事務所の弁護士・谷原誠さんは、こう語る。
「共に生活する以上、ある程度のがまんは必要です。しかし、中には感情的になってしまう人もいるので、関係がこじれないよう、余計な刺激を与えないことが大切です」
何か不満があっても、自分で直接話し合いに行かず、賃貸なら管理会社や大家、持ち家なら町内会長などに相談し、第三者から伝えてもらうこと。特に賃貸物件の貸し主は、居住者が居住目的で住めるように義務づけられているため、隣人トラブルは放置できない。
その際、証拠として騒音を録音したり、隣や上下の部屋の住人がどのように感じているのかも調べておくとよい。
それでも改善されないなら、弁護士に相談し、調停や訴訟を起こすことも可能。これは最後の手段となり、関係の修復は考えにくいが…。調停や訴訟を起こす際、法律用語の「受忍限度」がキーワードとなる。これは、生活を営む上でのがまんの限度だ。
たとえば、隣人から窓越しに見つめられた場合、カーテンを閉めれば視線は遮れるので、受忍限度を超えにくい。一方、騒音を防ぐには耳栓をして過ごさねばならず、生活を妨害し、ストレスになりやすい。
そのため、受忍限度は超えやすくなる。悪臭も同様で、努力しても防ぎきれない迷惑行為は、受忍限度を超えやすく、裁判などで有利に働く。不満の度合いは人それぞれだが、受忍限度がどれくらいかを考えると、訴え出るべき行為か、客観的に判断できる。
また、警察専用相談電話「♯9110」にかけると、生活の不安や悩みを相談できるので利用するのも手だ。2015年に警察が取り扱った相談件数は約200万件で、相談内容は騒音、ゴミ問題、ペット問題が多かったという。
「隣人トラブルなどで不安を感じた時は、躊躇せず110番通報してください」(警視庁・広報課)
ただし、話し合いが通じないような場合は、引っ越した方が裁判をするより費用も安く済み、安全を確保できるのは言うまでもない。
※女性セブン2017年7月27日号