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2017.07.20 16:00  SAPIO

【書評】自分の死を偽装することは可能かを検証する書

 著者の調査、取材によって次々と興味深い事実が明らかになる。

 死亡偽装の動機は金が圧倒的に多く、次いで暴力、稀に愛。借金から逃れたい、パートナーの暴力から逃れたい、別のパートナーと人生を歩みたい、というわけだ。死亡偽装を試みるのは大半が男性だ(男は夢想し、女は現実を受け入れる)。偽装の99%は遺体が見つからないこともあり得る水難事故。アメリカでは死亡偽装を試みて逮捕される人が年間20人以上いる(もちろん成功者の数は不明だ)。あの「9・11」のとき、後に確定した犠牲者の数は2801人だったが、事件直後には6千件以上の捜索願が出され、内44件は生きている人や、そもそも存在しない人物のものだった。

 エルビス・プレスリーやダイアナ妃など著名人の一部には都市伝説的な死亡偽装説があり、その最大のものはマイケル・ジャクソン。いまだにマイケルの死の真相を探る「マイケリング」を真剣に行い、生きていることを信じる「ビリーバー」という少なからぬ人たちがいる。死亡偽装の舞台となるのは、近年ではフィリピン、メキシコ、インド、中国が多い……。

 ユダヤの経典にも書かれていることが示すように死亡偽装は物語の原型のひとつで、人間が普遍的に抱いてきた空想だという。そして、〈この白日夢は、現代人の生活が極端に可視化されていることへの反動〉だ、と著者は分析する。

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