ライフ

【書評】自分の死を偽装することは可能かを検証する書

【書評】『偽装死で別の人生を生きる』/エリザベス・グリーンウッド著/赤根洋子訳/文藝春秋/本体1800円+税

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 リーマンショックが起こった2008年、27歳だった著者(アメリカの“ラストベルト”出身の白人女性)は、多額の学生ローンを抱えて絶望的になっていた。そのとき、友人が口にした「死亡偽装」というアイデアに取り憑かれる。自分が死んだことにして別の人間になりすまし、借金から逃れられないか? 著者はその後数年間にわたり、国民総背番号制が徹底され、街中のカメラで監視され、ネット上に足跡が残ってしまうこの21世紀のデジタル管理時代に、果たして死亡偽装は可能なのか、可能だとしたらどのような方法によってなのかを徹底的に調べる。

 主な取材対象は失踪希望者を手助けする有名な「失踪請負人」、生命保険会社から依頼され、死亡保険金の請求のうち死亡偽装が疑われるケースについて調査する敏腕「偽装摘発請負人」、アメリカとイギリスの有名な死亡偽装事件の当事者(結局は失敗して逮捕された者たち)、親に死亡偽装され、心の傷を負った子供たちなど。それにとどまらず、著者はなんと、死亡偽装の主要な舞台となっているフィリピンに飛び、自分の死亡証明書の作成を依頼し、入手に成功してしまうのだ。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン