病気の「前」だけでなく、発症の「後」にも目を向けた。その象徴が「終末期医療」へのこだわりだ。
「日本人は死について語り合うことが少なく、本人の希望を聞かず、医師や家族が延命治療を選択することが多い。でも日野原さんは、“患者の人生にとってクライマックスである終末期において、チューブにつながれて家族と話せない状態で終わっていいのか”“1分1秒でも延命しようとするのは医者のエゴではないか”、と問い続けました」(大西さん)
日野原さんは、患者が尊厳ある穏やかな死を迎えるための「緩和ケア」という概念を日本に根づかせるために奮闘した。
1993年には日本で初めての完全独立型ホスピスを設立。また現在、聖路加国際病院の10階には、日野原さんの肝入りでつくられた末期がん患者のための「緩和ケア科」がある。
日本は末期で動けない患者にも延命治療を施すケースが多いが、今は小林麻央さん(享年34)のように、緩和ケアをして自宅で穏やかな最期を望む末期患者が増えた。いわば、日本の「死に方」を変えたのが、日野原さんだった。
※女性セブン2017年8月17日号