国際情報

古谷経衡氏 インパールで聞いた日本兵の声なき声

インド北東部・インパールに立つ古谷経衡氏

 毎年、夏を迎えると戦争特集が新聞、テレビで組まれる。しかし、戦後73年を経た今、語り手と受け取り手の記憶の共有は困難になっている。今、戦争を知るとはどういうことなのか。そんな思いを抱きながら古谷経衡氏がこの7月、インド北東部のインパールに向かった。

 * * *
 インパール──、と聞くと少なくない日本人は先の大戦における、あの無謀な大作戦を思い描くだろう。1944年3月、悪名高き第15軍司令官牟田口廉也によって起草されたインパール作戦は、補給無き無謀な作戦計画の元に、都合4ヵ月以上に亘って行われた。

 結果、投入兵力約10万のうち、3万とも4万ともされる将兵が東インドの山野に倒れていった。「白骨街道」で知られるインパールは、無謀、無策、無責任の代名詞となっている。

 これだけ有名なインパール。他方、私の周囲に実際にかの地に行ったことのある人間は絶無だ。日本軍の組織論として名高い『失敗の本質』(初出1984年、中公文庫)。古典的名著として知られるこの本の中に、インパールが登場する。

 曰く、牟田口と上官・河辺正三(ビルマ方面軍司令官)の「情」が、合理的な反対意見を押し切って無謀な作戦を挙行させた云々…。版を重ねて久しい本書のオビが、最近新装されていて驚いた。小池百合子都知事が本書を「座右の書」として推薦し、煽り文句には「都庁は敗戦するわけにはいきません!」とドヤ顔の写真付き。その意気込みや良し、果たして本書の中に登場する激戦地へ、彼女はどれほど足を運んだのか。最近双葉社から出た小池の写真集には、ギザの三大ピラミッドを背景にはしゃぐ若き日の小池が登場する。

 韓国経済は崩壊する、とがなり立てながら一度も渡韓したことの無い者。チベットの人権問題が云々、と口角泡を飛ばしながら一度もチベットに行ったことのない者。そういった胡散臭い自称論客と小池を同一視するつもりはない。が、所々調べるところ小池がインパールに行った形跡もない。何が「座右の書」か。無性にむかっ腹が立った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
退職した尾車親方(元大関・琴風)
尾車親方、相撲協会“電撃退職”のウラで何が…「佐渡ヶ嶽理事長」誕生を目指して影響力残す狙いか
週刊ポスト
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン