佐藤中将がコヒマ攻略の際、逗留した小屋が今も現存する(コヒマ市郊外)


 よく居るのだ。座学で歴史講釈の上っ面をトレースしただけでさもビジネスやら処世術やらに援用しようという意識高い系が…。

 すわ沸き上がった怒りを奇貨として、私はかの地インパールへ向かうことにした。奇しくも、同作戦が大本営によって中止決定されたのが1944年7月1日。バンコクとインド東部のコルカタを経由すること、片道丸2日をかけてインパールに至ったのは、ちょうど同作戦中止から73年後に当たる7月初日であった。

 広大なインド亜大陸の最も東にあり、ビルマ(現ミャンマー)と国境を接するのがインパールである。空港で屈託のない笑顔にて出迎えてくれたのは、現地の戦史ガイド・アランバム氏(46歳)。ア氏は生まれも育ちも地元インパール。パンジャブ工科大学でMBAを取得したインテリである。実父がインド独立初期の陸軍軍人だった事に触発され、以後インパール戦史啓蒙の陣頭指揮に当たっている。

 瀟洒な自宅に私設インパール戦争博物館を設営、土の中から両軍の遺棄物資などを発掘、展示している。ア氏は連合国(英)・日本側双方ともに交流を持つ在野の戦史研究家として、同地を慰霊に訪れる元日本兵やその遺族等をコーディネートした経験もある。

 その活躍は朝日新聞紙面にも紹介された。今回の旅は、このア氏をガイドに、氏の四駆に同乗して山野を行く行程だ。

◆ジンギスカン作戦

 ここでインパール作戦の簡単な経緯を整理しておく。日米戦争が勃発するや否や、南方の資源地帯を掌握する「南方作戦」が発動され、日本軍は一挙に英軍をビルマ以西まで放逐することに成功した。大本営は元来、インド独立運動家、チャンドラ・ボースを擁してインド東部に攻め込み、イギリスの屈服を図るという構想を抱いていた。この構想は、日本の敗色が濃厚となった1943年末以降、活発になる。

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