国内

若者のPC離れ、キーボードよりフリックが速く上司嘆く

若者のPC離れが顕著(写真/アフロ)

 今春、男性新入社員が部下となった、大手商社勤務の30代会社員が嘆く。

「配属直後、翌日の会議で使う資料を作るように指示したところ、左手でスマホを持ち、フリック入力でパパッと調べものをしながら、右手でノートにメモしてるんです。不思議に思ってしばらく眺めていると、今度はメモした内容をパソコン(以下、PC)に打ち込み始めました」

 だが、上司の驚きはこれだけではなかった。タイピングがめちゃくちゃ遅いのだ。

「キーを1つ1つ確認しながら、ゆっくり入力しているんです。たまりかねて、“ブラインドタッチできないの?”と聞くと、堂々と“できません”って…。調べものの検索もスマホの方が慣れてるからと、PCを使わないんです」

 だが、決してこの新入社員だけが特別なわけではない。東京大学大学院情報学環の橋元良明教授が言う。

「名門と呼ばれる大学の学生はPCを使っているが、それ以外の大学の学生はPCを使わない率が高い。レポートもスマホで作成する」

 進学・就職情報などを手がける「マイナビ」の調査によれば、2017年3月卒の大学生の97.4%がスマホを持っていると答えている。ほぼ全員がスマホ所有者なのである。

 一方で自分専用のPC所有率は71%(2017年、NECパーソナルコンピュータ社調べ)とガクンと下がる。

「大学側も本格的な卒論を書かせたりするところが少なくなっていますし、レポート程度ならスマホや大学のPCルームで事足ります。彼らはスマホで何でもできると思っていますから。またPCは高価だからいらないという考えの学生が多いのが現状です」(橋元教授)

 神奈川大学非常勤講師で情報処理を教える尾子洋一郎さんは若者のPC離れの理由についてこう語る。

「彼らは初めての携帯がスマホという世代。だからPCの電源を入れることなく、ネット世界と繋がってきたため、PC自体が苦手なんです。だから若者にとってはPCのキーボード入力より、スマホのフリック入力の方が断然速い。90分授業の中で、時間内に課題の文書を仕上げられない学生も少なくありません」

 実際、冒頭の新入社員も「使えないキーボードで打つよりも速いし、慣れたスマホの方がストレスが少ない」とあっけらかんと話したという。前出の橋元教授はそんな若者を目の当たりにして、日本の未来を危惧している。

「もちろん大学生でも向上心が強い子はPCを使いますし、ワードやエクセルなどのソフトも使いこなす。一方で、そうではない学生はブラインドタッチもできず、社会に出ても仕事を任せてもらえないなどの問題が生じています」

 冒頭の上司は今日も心の中でつぶやく。

「シニアに交じってパソコン教室に通うところから始めればいいのになあ…」

※女性セブン2017年8月24・31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン