国際情報

「二人っ子政策」の中国でなぜまだ産み分けが求められるのか

中国社会はいまだに男尊女卑の傾向

 中国において「産み分け」の需要が減ることはないのはなぜか。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 7月末、中国深圳市の皇崗海関(税関)は、怪しい荷物を香港に運び込もうとしていた女性を捕まえ調べたところ、なかからパッケージされた203本分の人間の血液サンプルがみつかった発表した。

 同時に税関は、この女性がある種の運び屋で、運んでいたサンプルがすべて妊婦から採取したもので、交通費や報酬も受け取っていたことを認めたと発表した。

「女性の行動の意味が性別判断だったってことは、誰もが分かったはずです。そして出産前に胎児の性別が知りたいというのは、いまだ男尊女卑の傾向を持つ中国社会において、胎児が女と分かれば中絶するかもしれないという大きな問題に直結するため、深刻に受け止められます。人々にとっては衝撃のニュースでしょうね」(北京の夕刊紙記者)

 ニュースはたちまち、色とりどりに並んだ血液サンプルの前で説明する二人の女性税関職員の写真とともに配信され、大きな反響を呼ぶことになった。

 この事件を問題視した人々の中でも、最も強い反発が起きたのが、「いまや『二人っ子政策』が認められているのに、なぜまだこんなことをするのか」という点に対してだった。

 中国は一人っ子政策から、両親がともに一人っ子である場合には二人目が許されるという緩和策を経て、2015年10月から「二人っ子政策」が全面的に認められた。それでもなお、産み分けに対してこれほどのエネルギーを費やされている。

 受胎後の早い段階で胎児の性別を知りたがるのは、農村が男性を労働力として重宝したり、女性しかいないと後継ぎに困るという古い因習が絡むためである。つまり、産み分けは一人っ子の制限という時代錯誤の政策を依然想起させるものなのだろう。

 この事件がいみじくも抉り出したのは、一気に外の価値観を受け入れる都市において、いつまで古い価値観にとらわれるか、のギャップであり、ある種の中国の縮図であった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン