リインカーネーションものの多くはホラー小説になりがちだが、佐藤正午はむしろ、命のつながり、「命のリレー」の不思議さに惹きつけられている。瑠璃という少女が次々に現われる。まったく違う時、まったく違う場所に。その瑠璃は実は、ひとつにつながっていることが分かってくる。
最後の四人目の瑠璃は船橋に住む小学二年生の女の子。朝から雨の降る日、彼女は京橋の高層ビルの会社に行く。そしてある社員に面会を求める。誰もまともに応対しない。しかし、ただ一人、彼女が誰か分かった者がいる。いまは総務部長になった「アキヒコくん」……。
究極のラブストーリーになっている。
●文/川本三郎
※SAPIO2017年9月号