今秋刊行する初エッセイのゲラをチェック
「ワガママなんですよ。『オレはこういう風にしかできねぇや』って69年、生きてきましたから。自分の人生、誰かに指図されるなんてゴメン被りたい」
だが人生は、自分の思い通りになることなど稀だ。ましてや俳優という商売は、制約も多く、ままならないことも多いのではないか。
「人生、過ぎ去ったことは『万事正解!』と思っているんです。『人生の岐路に戻ってそこからやり直したい』と口にする人がいますが、私はそう思わない。面倒だし、うまくいくとは限らない。『あの時ああしていれば』と悔やんでストレスを溜めるより、自分の歩んできた人生、万事正解! と肯定したほうが、気分がいい。だって、いろいろな出合いとか、選択とか、偶然とか、そういうことが重なり合って今があるんだから。そんなに胸張れる人生かって? いいんです、自分が楽しけりゃ。他人は関係ありません」
角野は役者人生を振り返った初エッセイを今秋、上梓する。
「好き勝手書いております。『こんな生き方で楽しくやってる奴がいるんだな』と、読んで気持ちを楽にしてもらえたら嬉しいですね。読んだら正解? そんなこと、知りません(笑い)」
【PROFILE】かどの・たくぞう/1948年8月10日、東京都生まれ。学習院大学経済学部卒業後、文学座附属演劇研究所(10期)を経て、文学座座員となる。以降、舞台、テレビ、映画、吹き替えなどジャンルを問わず幅広く活躍。2008年の紫綬褒章をはじめ受賞歴多数。最近では「ドコモ」CMなどでもお馴染み。現在も文学座に所属し、今秋、居酒屋の流儀や60代からの生き方、役者人生などを振り返った初エッセイを上梓する予定。
●撮影/二石友希 取材・文/角山祥道
※週刊ポスト2017年9月22日号