糖尿病性認知症の発症に関しては、糖代謝異常による糖毒性が関与しているのではないかと考えられている。糖尿病に伴い、神経細胞内にリン酸化されたタウタンパクが異常集積し、認知症発症に繋がる。同時に高血糖が長期間続くことで神経細胞が徐々に障害され、発症リスクが高まる。一方で低血糖では、特に記憶に関わる海馬や大脳の神経細胞のダメージが大きい。正常血糖値100ミリグラム/デシリットルが、急に50ミリグラム/デシリットルに低下しただけで神経細胞は障害されるが、血糖値の日内変動が激しい場合でも障害が大きい。

「糖尿病性認知症は、コントロール可能な認知症といわれています。例えば患者を入院させ、適切に血糖コントロールするだけで認知症の進行を抑制したり、症状を改善できます。糖尿病性認知症なのに、アルツハイマー型と診断され、抗認知症薬の治療を受けていても症状は改善しません」(羽生主任教授)

 現在、認知症患者は460万人、前段階の軽度認知障害患者も推定で400万人以上いる。仮に、糖尿病を合併している軽度認知障害患者に血糖コントロールを実施すれば認知症予防も可能だ。そのためにも40代からの血糖管理がさらに重要となってくる。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2017年9月29日号

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