ここまでの事例はまれだが、「激安価格」をウリにする葬儀社などは注意が必要だ。家族葬でもトラブルは絶えない。都内の70代女性がいう。
「夫の遺言に従って親族8人ほどでひっそりと葬儀を行ないました。でも田舎に住む一部の親戚は価値観が全然違って……。いまだに“あんなにみすぼらしい葬式じゃ浮かばれん”“旦那の葬式代をケチるなんてとんでもない嫁だ”と批難されているんです。
“夫の遺志だ”と説明してもなかなか納得してもらえない。別にお金に困っているわけじゃない。こんなことなら遺言に従わず、普通の葬式をあげればよかったと思います」
残された家族に負担をかけたくない──そんな気持ちがアダになり、嫌な思いをさせてしまうのでは本末転倒だ。墓や納骨堂も息子世代、孫世代に「墓問題」を残すことがある。ある寺院関係者がいう。
「子や孫のために預貯金を残してあげたいと考え、資金に余裕があっても安価な納骨堂や合同墓を選ぶ人は少なくない。しかし骨壺が2つまでしか収納できない納骨堂や、合同墓の場合、子や孫が『同じ墓』に入ることができなくなるため、新しくお墓を探さなくてはならなくなるのです。
祖父母の一般墓は神奈川、父親の合同墓は千葉、妻の納骨堂は埼玉、などということになれば、とても全てを回りきれない。結果、無縁墓同様になってしまうケースもあります」
「死後格差」が、子や孫にまで“相続”されてしまうというのも悲しい話か。
※週刊ポスト2017年10月6日号