「例えば加藤一二三先生が引退まで昼夜、鰻を食べ続けたというのは有名ですね。ある意味、棒銀一筋だった一二三先生の棋風を象徴する話だと思います。賛否両論あると思いますが、一つのことにこだわるタイプの方だと感じました。他には佐藤康光先生。冷やし中華に餅を追加して注文したことがありました。何を考えているんだろうと思いましたが、先生の棋譜自体が独特な『緻密流』。不思議な手を指されて勝たれる方なので、それもまた先生なのかなと思いましたね」
作中に出てくる店はすべて実在の店とあって、将棋ファンだけでなく、将棋をあまり知らない層にも楽しめるようになっている。今のところ、架空の店を作品内に登場させる予定はないという。
「できる限りリアリティを保ちたいというのもありますし、せっかく読者が将棋とめしの漫画を読んでくださったなら、自分も食べてみたいという気持ちになってほしいので、その時にその店があればと思います。そういう楽しみ方もできれば、また漫画の楽しみ方も広がると思います」
将棋は対局だけではないと感じているという松本氏。
「対局中に棋士が食べる食事もまた対局の一部だと思います。これから将棋を観てみようという方には、そういうところを見て楽しんでいただけたら嬉しいですね」
※週刊ポスト2017年10月6日号