芸能

竹野内豊が意固地で不器用な中年男役 その「声色」の魅力

二枚目役とは違った新境地を拓いた

 人の印象を決定づける上で、表情や仕草、服装が大きいのは言うまでもないが、案外大きいのが「声」である。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 世の中は一気に選挙モードへ突入。テレビは政治家それぞれの信条・政策以上に、そのキャラクターに注目。

「あの人の話し方は、タメが無いからだめなんですよ。一拍置かず、すぐ言葉を続けてしまうから、軽くなる」

 言葉以上に、どういったリズムや間合いで話すのかによって説得力というものは違ってくるらしい。

 「政治家はやはり、気概と胆力ですよ」

 その人が放つ熱、迫力がキーという指摘も。

「政治家としての勘がバツグンにいい」

 タイミングの良さ、瞬発力が勝負を決するということか……。

 選挙は「政策を論理的に語る」だけでは済まない。だから人間的で面白いとも言える。他の人に届き、感情を揺さぶるような「話しぶり」が力を発揮する。風雲急を告げる戦いの舞台では、いかに「幅広い共感を掴めるか」が決め手になるのかもしれません。

 そんな今、「声に出す」という旬なテーマを、ドラマの中でイキイキと描き出している作品があります。NHK総合『この声をきみに』(金曜午後10:00)は、朗読教室を舞台に「人が話すこと」の深さや面白さ、声の力を描くユニークなドラマ。脚本は書き下ろしのオリジナル。しかも、大ヒット朝ドラ『あさが来た』を担当したあの大森美香さん。

 そのストーリーは……離婚を切り出され、妻は子供たちを連れていなくなり、一人暮らしをしている偏屈な数学講師・穂波孝(竹野内豊)が主人公。「うまくいえないけど僕の心の中にはいつも、埋めようのないぽっかりとした空間がある」と自覚している中年男性。

 これまで竹野内さんはイケメン、二の線のイメージでした。が、このドラマでは正反対。意固地で冴えない不器用な中年男。コミュ力不足で、人間関係に難あり。いるいる、こういう面倒くさい人、という匂いを漂わせている。その役柄にピタリとはまっていて、二枚目役者とはまた違った新境地を拓いています。

 自分の偏屈さに気付いても、なかなか変えることが難しい孝。偶然出会った小さな朗読教室で、「語ること」「声に出して話すこと」について学び始める。先生や個性的な生徒達と一緒に「朗読」を始め、新たな人生の1歩を踏み出す……何といっても、「語り」「朗読」といったテーマを正面から扱うドラマというのが珍しい。

 第1話目から、谷川俊太郎の詩「生きる」の朗読シーンが挿入される。海をバックに役者たちが円になって順繰りに詩のフレーズ「生きるということ」「今生きていること」……と朗々と語っていく。そう、まるで舞台の群衆劇のよう。それが突如ドラマの中に挿入されるというユニークさです。

 誰かの声を直接聞いた時、ふいに心が揺さぶられ、つい涙が出る。熱くなる。そんな経験を思い出しました。役者たちの「声質」を聴き分けて鑑賞するのも、また楽しい。竹野内さんは低く深く響く声。それが耳に心地よい。

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