国際情報

男尊女卑が根強い中国 妊婦が無謀な産み分けに走る悲劇も

地下のマーケットがいまも厳然と存在か

 先進国において「男女同権」は常識となりつつあるが、中国ではまだまだそうはいかない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 中国社会における子供の男尊女卑は、「一人っ子政策」が実質的に崩れ去った現在もまだ健在だとされる。

 先日も、出産前に性別を知りたいと願う親たちの要望を受けて、大量の妊婦の血液検査用のサンプルを隠し持って香港へと渡ろうとしていた業者が、水際で摘発されるという事件が発覚し国内でも大きなニュースとして取り上げられた。子供の誘拐に絡み売買される嬰児の値段も男女では5倍ほど値段に差がつくともいわれている。

 男児の出産をとりわけ喜ぶ傾向が強いのは農村部で、北京や上海などではもはやそうした傾向は薄らいでいる。だが、中国全体を見回せば、まだまだ“男尊女卑”は根強い。

 さて、そんな中国にあっても人々をあっと驚かせるニュースを発信したのは8月22日付『現代快報』である。記事のタイトルは、〈男の子を産みたいと“神の薬”を服用 結果、二つの性を備えた子が産まれる〉だ。

 今年、江蘇省連雲港市の第一人民医院の医師が、4歳になる両性具有──男性器と女性器の両方を持った──の子供に手術を施したというニュースだったが、驚いたのはその記事のなかで子供が両性具有となった原因を、〈母親が妊娠中に“転胎神薬”と呼ばれる民間医療の薬を飲んでいた〉と解説されていたことだ。

 民間医療などと表現されると聞こえは良いが、実態は言い伝えや迷信のたぐいだ。

 はたして本当に薬の影響か否かは確かめるすべもないが、驚かされるのは、そうした怪しい薬がいとも簡単に手に入ってしまう環境がまだ中国にはあるという事実だ。また、妊娠中という極めてデリケートな時期に、人体にどんな影響があるかも不明な薬を、医師の判断もなく飲んでしまうという感覚だ。

 そこには男の子を産みたい、もしくは産まなければならない妊婦のニーズにこたえるように発達した地下のマーケットがいまも厳然と存在していることをうかがわせる。IT革命が爆発的に中国人のライフスタイルを変えている現在にあってもなお、中国人のこうした因習が消えることはないのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン