「灰皿はありません」と書かれた大阪府庁そばの喫煙スペース
ただ、課題となっている新たな喫煙所の整備も、大阪府や大阪市は受動喫煙を防ぐ場所の選定や管理する予算の問題などが立ちはだかり及び腰だ。そこで、ゆっくりとたばこが吸える飲食店がスモーカーの唯一のオアシスといえるが、こちらも規制の波が及びそうな雰囲気に、業界団体も警戒感を強めている。
「大阪には歴史ある商店街で馴染みのお客さんだけを相手にした小さな飲食店も多数あります。よく禁煙にしてもお客さんは減らないという議論が出ますが、それは客数の母体が大きなナショナルチェーンの話。
高齢の店主がひとりで生業を立てているようなお店は、いつも来てくれる地元のスモーカーが来なくなるだけであっという間に廃業に追い込まれてしまいます。やはり、喫煙できるかできないかは店の業態や規模、それにお客さんの選択に任せるべきであって、血眼になって行政が一律規制する方向には到底納得できませんね」(大阪府飲食業生活衛生同業組合の亀岡育男理事長)
再開発が進み、高層のオフィスビルや最先端の商業施設が建ち並ぶ大阪北エリアでは、喫煙者を決して“排除”しない方針で好評なスポットもある。
JR大阪駅から徒歩すぐの超大型複合施設「グランフロント大阪」には、北館・南館・広場を合わせて合計10か所の喫煙ルームが配置されているほか、従業員やオフィスタワーで働く人たち専用の喫煙所も完備。また、約80店舗が集積する飲食店のうち、30店以上が店内で時間分煙を実施するなど、じつにスモーカーに優しい施設となっている。
「われわれのような複合施設は、オフィスワーカーだけでなく飲食を目的とした人、ショッピングを楽しむ人、外国からの観光客などさまざまな方が来館されます。
その中で喫煙者も非喫煙者も大事なお客さん。ビルとして喫煙室のようなインフラを設けることは決して後ろ向きとは捉えていないため、2013年の開業時から、たばこを吸う人が悪くて、吸わない人に迷惑をかけるからと、一方的な固定観念だけで舵を切るようなことはしていません」(グランフロントを管理する阪急阪神ビルマネジメント・SC運営事務所の担当者)
もちろん、非喫煙者への配慮も欠かさない。入居する飲食店には禁煙を推奨しつつも、「禁煙です」のほか、「喫煙できます」「分煙しています」「時間で分煙しています」と大きな文字とマークが描かれたビル共通ステッカーを店頭に貼るように呼びかけている。