試合中は10人のグラウンドキーパーが整備する


 彼らの作業は練習開始の5時間前から始まる。まず鋤をつけた2台のトラクターで内野をクルクルと何周も巡る。保水力のある鹿児島の黒土と、水はけがいい京都の砂が6対4の割合でブレンドされた、土の表面3cmほどを丁寧に掘り起こしていく。

「砂が表面に浮き出ると土が乾き、弾力性を失って打球が跳ねやすくなりますから、それを防ぐために黒土と砂の配合を最適なバランスに戻す。そのために欠かせない毎日の作業です。吸水性を取り戻したグラウンドでは、イレギュラーバウンドが減少します」(金沢氏)

 掘り起こした土が乾いて変色すると、ローラーで踏み固めてトンボで整備し、最後に水を撒く。毎日同じ作業の繰り返しだが、天候や気温、湿度によって土は違う表情を見せる。

「砂が乾けば下の黒土が固まって弾力性が増すのでボールが跳ねすぎる。水分が多くなれば柔らかくなってケガをする可能性が高くなる。状況によって微妙に作業時間や内容を変え、季節で土の配分も変えます。もちろん明確なマニュアルはない。長年の経験をもとに手作業で理想の硬さに仕上げていきます」(金沢氏)

 選手にとっての理想の硬さに仕上げ“援護射撃”することも。かつて赤星憲広が5年連続で盗塁王に輝いた時は、岡田彰布監督の発案で一、二塁間を固めていた時があったそうだ。

「マウンドの高さや傾斜を変えることはルール違反だが、グラウンドの硬さや芝の長さにルールはない。今は均等にしていますが、20年前は選手の好みで守備位置の硬さを変えていました。柔らかいグラウンドでのプレーに慣れていない外国人選手のポジションだけ硬くしていたこともあります」(金沢氏)

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