ところが戦後、欧米型の食が食様式ごと輸入され、たんぱく質や脂質の摂取も増えた。高度成長期には、摂取エネルギー量も急上昇。生活習慣病への警鐘が鳴らされるようになった。医師や管理栄養士から「丼、カレー、ラーメンといった一杯、一皿で完結するような食事は栄養のバランスが悪い」という声が挙がるようになってきた。
「食」はいつも「栄養」と「嗜好」の間をたゆたっている。この夏は各メーカーから「押し麦を使ったオムライス」や「糖質量を半減させたパスタ」、「糖質を9割カットしたうなぎのタレ」などが発売された。牛丼チェーンも、糖質の摂取がゆるやかになる「サラシア牛丼」を吉野家が発売。松屋も定食のライスを豆腐に変更できるサービスを開始した。現在のトレンドは、消費者の嗜好に沿った上で過剰だとされる栄養を制限する手法のものが多い。
さらに最近では、そのトレンドはより先鋭化してきている。8月末に回転寿司チェーンの「くら寿司」が導入した「糖質オフシリーズ」の「シャリ野菜」メニューはにぎり寿司のシャリの代わりに大根の酢漬けの千切りを使用したもの。素材の構成を考えると、海鮮サラダにほかならない。
糖質の吸収をゆるやかにする成分を添加したり、素材を置き換えるなどして、さまざまなメニューに糖質制限が取り入れられるようになった。飲食チェーンやメーカーも開発に余念がない。次なる糖質制限アイテムはどんなものが生み出されるのか、今後も生温かく見守っていきたい。