選挙においては、矢野顕子が過去に歌ったように親同士が敵味方に分裂し、選挙のたびに殴り合いになるのである。今の時代、ネットはその状況になっている。佐々木氏はバランサーとしてのスタンスを明確にするのだが、その都度、基本的には「パヨク」の側から批判が寄せられる。「お前はリベラルを装ったネトウヨだ」と。
両派とも、自分の意に沿った発言をしない限りは“敵味方”を明確に分ける二元論となり、「ネトウヨ」「パヨク」のレッテル貼りをし、罵り合う。そもそも昨今の市民活動のイシューはおかしい。
「脱原発」に賛成しているのならばそれでいい。しかし、なぜかそれと「憲法九条改憲反対」「朝鮮学校無償化賛成」「加計学園問題は叩け」派が同じ論調なのである。「リベラル」の名のもとに「それらには賛成(反対)しよう」といった談合的状況になっているのだ。その界隈のオピニオンリーダー的な人の号令を待ち、その論調に従う傾向がある。
そこで一致するのは「反安倍政権」ということである。イシューは関係なく、とにかく安倍政権がむかついて仕方がない人々が連携し、何にでも反対している状況がある。これが佐々木氏言うところの「パヨク」である。
ネトウヨに関しては、安倍晋三首相のことであればなんでも擁護し、景気の悪化が懸念される消費増税も「必要なことだもんね」と容認。結局政策ではなく、「誰か」が選挙で最も意思決定に影響するのである。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2017年11月3日号