「華人」とは、その字のごとく中華系の人々である。冒頭に書いたように、2015年頃に湾岸のタワーマンションを爆買いしていた中国や台湾の人々が「売りに転じているのでは」という疑心暗鬼が広がっている。私は先日中国系のメディアから取材を受けたが、彼らも一部にそういう動きがあることを認識していた。
東日本大震災の直後、都心の不動産市場に占める華人系の存在感は今の数パーセントもなかったと推定する。しかし、2013年以降に売り出された湾岸エリアのタワーマンションでは、購入者に占める華人率はかなり高そうである。ただ、私はそのこと自体を懸念しているのではない。
私が見るところ、華人たちと日本人一般の不動産取引に対する感覚には多少の違いがある。最も大きな特徴は、彼らは損切りに躊躇しない、というところだ。日本人なら1億円で購入したマンションが8千万円でしか売れないとなっても「そのうち9千万円で買う人が現れるかもしれない」と考えて、ホールドを続けるケースが多い。
しかし、中華系の人々は「だったら8千万円で売って、そのお金で値上がりしそうな投資案件を買う」という動きになりやすい。
東日本大震災の直後、多くの中国人は「東京が放射能でダメになる」という噂を信じた。一部の人々は、手付金を放棄して湾岸タワーマンションの購入契約をキャンセルし、なおかつ上海まで片道40万円のチケットを買って母国に逃げ帰ったのだ。
今回、仮に高高度核爆発による電磁パルス攻撃がなくても、新潟あたりの原子力発電所がゲリラに襲われて放射能事故が発生したら、華人たちはどういう行動を取るのか。思い切りのいい彼らが一斉に損切りの売却に走ったとしても不思議ではない。