それに対し、シアトルは約12万ドルで2割ほど安いが、住居費をはじめとする生活コストが安いので、可処分所得はシリコンバレーやベイエリアより高い。しかも、水と山と緑に囲まれ、“エメラルド・シティ”と呼ばれるほど住環境が良い。このため多くの人がシアトルを生活圏として好むようになり、アメリカ西海岸で北への移動が始まっているのだ。
しかし、「アメリカ第一主義」のトランプ大統領の登場で大問題が起きている。アメリカ人の雇用を増やすため、専門技能を持つ外国人向け就労ビザ「H-1B」の審査が厳格化され、海外の人材がアメリカで働けない事態になっているのだ。
たとえば、インドのITサービス企業インフォシスの創業者で友人のナラヤナ・ムルティ氏が来日した時に会食したら、「アメリカに派遣している1万人のインド人技術者をインドに帰さなければならなくなった」と途方に暮れていた。そのため同社がアメリカで1万人を新たに雇用するという報道もあったが、今回の視察旅行で現地取材したところ、代替策があったらしい。
それは「カナダ」である。アメリカのIT企業は、隣国カナダに人材を移動しようとしているのだ。とりわけ注目を集めているのが、シアトルから北へ車で2時間半のバンクーバーである(バンクーバーについては後日配信)。
※週刊ポスト2017年11月10日号