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「買ったほうがトク」持ち家派に欠けるバランスシートの概念

「住宅はもはや生活するための手段に過ぎない」と牧野氏

 都会を中心にクルマを買う人が減っているという。クルマは1970年代、一般庶民が所有したい新三種の神器と呼ばれる3C(「クルマ」「カラーテレビ」「クーラー」)に堂々とランクインしていた。当時のクルマは一家の財産であった。クルマを持つことは、生活に余裕のある証左でもあり、一種のステータスがあったともいえよう。

 ところがクルマは三種の神器を卒業して、どの世帯でも所有できるようになると、むしろ生活の足として、地方を含めた全国で売られるようになる。日本独特の税制も影響して軽乗用車という日本独自規格のクルマが登場するに至って、家族に一台から各家庭の大人に一台の時代になった。

 その一方で、クルマは急速にコモディティ化し、これを財産と考える人は一部の高級車を求める人を除いて日本ではいなくなった。もともと東京などの大都市では鉄道網が縦横無尽に張り巡らされ、通勤通学などにクルマを利用するという発想は希薄だった。

 それでも住宅が郊外に郊外にと延びていった時代は、クルマは生活の足として珍重されたが、都心居住が進展すると、都心ではクルマを使わなくても豊かで便利な生活を送ることができることからクルマに対するニーズは急速に失われていったのだ。

 また、クルマを所有することの非経済性が着目され、カーシェアリングのように、単なる移動の手段として「必要なときにのみ利用する」という考えも急速に広まってきている。利用料さえ払えば、別に家に鎮座している必要はない、という発想だ。

 さて、一般市民にとってクルマ以上に常に憧れであったマイホームはどうであろうか。

 先日、朝のラジオ番組のリスナーからの相談コーナーで「いま、家を買おうかと迷っているのだけれどどうしたらよいのか」という質問に視聴者がアドバイスする内容が聞こえてきた。

 やはりというか、いまだに、というかアドバイスで多いのが「家賃を払っても自分のものにならないのだったら、買っちゃったほうがトクだよ」というアドバイスだった。実はこの「トク」という表現に日本人の脳みそに短期間で植え付けられたDNAのようなものを感じざるを得ない。

 持ち家を推奨する理屈には上記を含めて次のような観点がある。

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