(1)家賃がもったいない
(2)今はローンが低金利で税金も有利
(3)ローンは共働きで返済できる
(4)いざとなれば「貸す」、「売る」ことができる
(5)高齢になると貸してくれない
現在、住宅ローンは「フラット35」を利用すれば期間で35年もの長期のローンを組むことができる。また、返済年齢も最長で80歳までに設定できる。金利は史上稀にみる低金利状態。住宅ローン減税を含めるとなんだか「買ったらトク」と思わせる内容だ。
また、住宅を持てば、自分の財産になる。それもその通りだ。そしていざとなれば「売ればよい」「貸せばよい」。そして老後も住宅難民とならずに安心というわけだ。
いずれももっともらしい理由なのだが、これらの理屈に欠けているのが、「時間軸」と「バランスシート」の概念である。住宅を買うのはもちろん「いま」である。つまり「いま」という時代がこの先どう変化していくかを考える必要がある。これが時間軸だ。
クルマも時代の流れとともにその存在意義や価値観が変化していった。クルマであれば価格も住宅よりは安く、5年からせいぜい10年程度の所有物であるからよいが、住宅はそういうわけにはいかない。
東京五輪が終わる2020年以降を見通すならば、住宅を取り巻くマーケット環境はかなり変化することが予想される。つまり、現在首都圏郊外部などに大量に居住している団塊世代全員が後期高齢者となり、相続が大量に発生してくることが予想される。
これを相続する団塊ジュニア以下の世代は、夫婦共働きがあたりまえになり、親が住んでいた郊外から会社に通勤するのはまっぴらごめん。相続した家は空き家として放置するか、賃貸に拠出する、あるいは売却するという選択となるだろう。
しかし、首都圏では2020年には人口は減少をはじめ、東京都ですら2025年には人口がピークアウトするといわれている。住宅需要は減少の一途といってよいだろう。
加えて、2023年には大都市近郊の都市農家に税制上の優遇を与えていた生産緑地制度の期限到来が控えている。この制度は1992年に営農30年を条件に生産緑地を選択すれば、都市農地の固定資産税を農地並みに扱うとしたものだ。その期限がやってくるというわけだ。
政府はさらに10年の延長制度を設け、また土地の賃貸ができるように法改正を検討しているが、農業の担い手は1992年当時とは異なり高齢化が著しい。実際は後継者難や相続の発生で、宅地化されてマーケットに供給される土地は少なくないものと見込まれる。
こうした時間軸で眺めるのならば、東京五輪前で建築費が高騰しているマンションなどの住宅をただ「家賃を払うよりもトク」という単純な理屈だけで買うのは得策ではないだろう。
また、こうした供給圧力は、将来困ったときには「貸せばいいじゃん」「売ればいいじゃん」という対策がずいぶん楽観的な方法であることに、ジュニアたちの多くが相続した親の家の処分に至っておおいに気づかされることになるだろう。