財務官僚はメディア工作にも抜かりはない。朝日新聞は所得控除の見直しについては「高所得者の税負担を重くする代わりに中・低所得者の税金を減らす内容」(10月23日付朝日新聞デジタル)と報じ、日経は現在の公的年金控除を「高所得者に過度の恩恵が及んでいる格好だ」と批判するなど、財務省の言い分をそのまま報じている。
2018年の「増税の年」に向けてレールが敷かれると、霞が関からは総選挙が終わるのを待ちかねたように“我が省も、うちの庁も”とここぞとばかりに増税要求が次々に噴き出した。
観光庁は日本を出国する旅行者を対象に1人1000円を徴収する「出国税」(観光税)の創設を打ち出し、観光客への「宿泊税」も検討されている。総務省は住民税に年間数百円を上乗せする「森林環境税」を創設、国が集めた税収を市町村に配分し、国土保全の安定財源にする構想を掲げた。税法が専門の浦野広明・立正大学法学部客員教授(税理士)が語る。
「観光庁の出国税は海外からの旅行客むけの観光宣伝事業や案内板整備に使う予定で、創設されると同庁は独自の財源を得て予算は3倍に増える。総務省の森林環境税も名目は何であれ、住民税に上乗せして自治体に配分するのだから実態は住民税増税そのものです。
食品に対する消費税の軽減税率の導入は最初から決まっているのだから、代替財源の手当は必要がないはず。国民のために必要な財源とはいえず、役所が予算を増やして焼け太るための便乗増税以外の何物でもない」
こうして空前の増税ラッシュが近づいている。
※週刊ポスト2017年11月17日号