「『死ね』という言葉遣いだけで反撃しても不毛の争いになるだけです。本質を突く反論をすべきで、言葉に感情で返してはいけない。かつて朝日新聞はクオリティペーパーという立場から他媒体に反論はしなかったが、今はそうしないと情報が独り歩きしてしまう。だからこそ、言葉尻でなく堂々とした論陣を張って議論してもらいたい」
◆安倍叩きは社是
産経OBにも聞いた。元ニューヨーク支局長・山際澄夫氏が苦言を呈す。
「メディアが自由に批判し合うのはいいが、『死ね』をめぐって争うのは低レベル。産経はかつて慰安婦などの歴史問題で朝日の誤報を告発してきた。ただし、朝日さえ批判していればいいというのは違う。今はむしろ保守の立場から安倍政権を厳しく見ることのほうが重要だと思う」
中傷合戦はついに紙面を超えた場外乱闘に及んだ。
朝日は22日付紙面で、文芸評論家・小川栄太郎氏が著書で朝日の報道を「捏造」と書いたのは〈本社の名誉や信用を著しく傷つけた〉として、著者と出版元の飛鳥新社に謝罪と訂正を求める文書を送ったと報じた。
対して産経は抗議文は“うちにも来た”として同社が発行する月刊「正論」の菅原慎太郎編集長宛に、朝日から訂正を求める申し入れ書が届いたことを書いた。ご丁寧にコラムの記述と抗議の内容まで報じている。“また攻撃材料ができた”と喜んでいるフシさえ感じられる。
もはやそれぞれの体面を保つための記事で読者に情報を伝えようという姿勢のカケラもない。国民の新聞離れに拍車がかかるのは当然だろう。
※週刊ポスト2017年12月8日号