ライフ

「乗り鉄」の京急社員 日本の全線踏破後は全駅制覇に挑戦中

北海道の沼牛駅での1枚。すでに廃駅となっている

 全国の鉄道ファンにとって、一度は必ず抱く夢が「鉄道会社に就職すること」。子供の時から鉄道に親しみ、鉄道とともに育ってきたような熱心な鉄道ファンは「鉄道会社に就職しようとしても敬遠される」というのがファンの間では定説だが、京浜急行電鉄に勤める重松祐一さん(49)は、日本全国のJR路線および私鉄路線をすべて乗り尽くしたという“乗り鉄”だ。重松さんに話を聞いた。

「私は小さい頃から鉄道好きで、マンガ本より時刻表が好きでした(笑)。京急に入社する前はツアーコンダクターをしていて、仕事で鉄道に乗る機会が多く、自然と乗車した区間が増えて、本格的に全線乗ろうと意識しました。JRは基本的に『青春18きっぷ』を使って30代なかばで完乗し、私鉄も40代なかばですべて乗り終わりました」(重松さん。以下同)

 重松さんは、会社では「京急ご案内センター」の副センター長を務める。「ご案内センター」には、多くの人から「沿線の河津桜の見頃は」「目的地までどうやって行けばいいのか」などといった問い合わせが寄せられる。重松さんは、センターでは答えられない内容について、担当部署にヒアリングする立場にある。そのため、京急の本社社員の多くは重松さんの存在を知っている。

「だけど、私がこんなに“乗り鉄”だというのを知っている社員は、ほとんどいないでしょうね」と重松さんは笑う。新線が開通すれば、それがどんなに短い区間でもすべて乗りに行っているという重松さん。乗り鉄としてある種の高みに達してしまうと、今度は“降りること”にも興味を覚えるようになったという。

「全線に乗ってしまうと、今度は『全駅を制覇してみよう』という考えが浮かんできました。ルールは、駅に降りたら、その列車を見送ること。つまりホームに一瞬降りて再び列車に乗るのはNGです。

 地方に行った時は、降りた駅でボーッと次の電車を待っていると時間がもったいないので、(乗降駅を増やすために)隣の駅まで歩くんです。昨年の夏には、三江線の全駅を乗り降りしてきました」

 さらっと三江線(さんこうせん)という言葉が出たが、これは島根県の江津(ごうつ)駅と広島県の三次(みよし)駅の約108キロを結ぶ路線で、1日の列車数はわずか5本。来年3月に廃線となることが決まっている。上り下りの列車を上手に乗りこなし、なおかつ「隣の駅まで歩く」というテクニックを駆使すると、1日5本しか列車が走っていない三江線でも、1泊2日で全35駅に乗り降りすることができるらしい。列車に乗っているより、歩いている時間が長そうだが……。旅先では同好の士と出会うこともあるそうだ。

「最近、“秘境駅”が流行になっていますが、北海道に小幌(こぼろ)駅という、外へつながる道路もなく、列車でしか行くことができない秘境駅があり、そこが廃止されるという噂があったので、降りに行ったんです(※その後、当面廃止は見送られた)。

 すると、同じく小幌駅で降りた人間が数人いて、声を掛けてみると、全員が数時間後の同じ列車で帰る予定だということが分かったので、『それなら一緒に散策しましょう』と。その時の仲間は全員が東京の人だったので、『小幌の会』と称して、今でも東京で集まっています」

 その鉄道仲間は重松さんが京急勤務だと知っており、“いちはやく情報を教えて”と言われることもあるそうだが、「内部にいると、知っていても逆に教えられないんですよ」と笑う。

関連記事

トピックス

2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《異なる形の突起物を備えた光沢感あるグローブも…》10代少女らが被害に遭った「エプスタイン事件」公開された新たな写真が示唆する“加害の痕跡”
NEWSポストセブン
「みどりの『わ』交流のつどい」に出席された秋篠宮家の次女、佳子さま(2025年12月15日、撮影/JMPA)
佳子さま、“ヘビロテ”する6万9300円ワンピース 白いジャケットからリボンをのぞかせたフェミニンな装い
NEWSポストセブン
オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン