◆「長寿ホルモン」の分泌
オステオカルシンは、骨全体の質量の約0.4%しか存在しない。そのうち血液を介して様々な臓器に運ばれるのはさらにわずかな量とされている。なぜ、骨から分泌される微量なホルモンが糖尿病を予防するのか。
「オステオカルシンは膵臓と小腸に直接働きかけます。膵臓ではランゲルハンス島β細胞を増殖させ、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量を増加させる。小腸では、同じくインスリン分泌を促すホルモンであるインクレチンの分泌量を増やします。オステオカルシンの濃度が低い人は、糖尿病診断の指標として用いられている『ヘモグロビンA1c』が高いケースが多いこともわかっています」(前出・平田氏)
東北大学大学院医工学研究科教授の永富良一氏は、「脂肪細胞」への働きかけにも着目する。
「オステオカルシンは、脂肪細胞が出すアディポネクチンの分泌も促します。アディポネクチンはインスリン感受性を高めるため、血糖値の改善を促すと考えられます。また、アディポネクチンには多すぎると筋力が弱ってしまうという弊害もある一方、『長寿ホルモン』とも呼ばれており、動脈硬化や脂質異常症を抑制する効果があります」
◆「筋肉」も「精子」も増加
オステオカルシンが動脈硬化を防ぐのは、血管内の一酸化窒素の産生を促進する働きがあることも大きいという。前出・平田氏がいう。