国内

「プチぼったくり」居酒屋増 繁華街からキャッチが消えない訳

「プチぼったくり」居酒屋とキャッチは一蓮托生

 キャッチと呼ばれる「客引き行為」といえばキャバクラなど客席で接待される業態の店への勧誘のイメージが強い。しかし最近では居酒屋やカラオケなどへの「キャッチ」が増えている。しかも、この居酒屋などの店舗は、相場より微妙に高い「プチぼったくり」の店が多いのだ。今では多くの自治体で禁止され、取り締まりの末に逮捕者が出ているにも関わらず、繁華街の路上から「キャッチ」は消えない。最近では「プチぼったくり」を常習とする居酒屋などに雇われることが多い「キャッチ」の実態を、ライターの森鷹久氏がリポートする。

 * * *
「悪質なキャッチに注意しましょう」

 東京・上野の繁華街に繰り返し響く無機質なアナウンス。そのスピーカーの真下にいた男性が、男ばかり三人で歩いた筆者達の元に駆け寄ってくる。

「飲み、女の子、抜き、どれですか?」

 お兄さん、キャッチ? と聞くと“はい、キャッチっす!”と、悪びれるそぶりも一切見せず、笑顔で答える青年。キャッチが禁止されているはずの上野仲通り商店街で、しかも、今まさに通りには「キャッチについていくな」というアナウンスがなされているにも関わらず、実に堂々と“キャッチ行為”を行っている。そしてよく見ると、通りのあちこちにも、一目でキャッチと分かる若い男らが、少なくとも十数人はいた。

「(取り締まりを)やってもやっても、キャッチはまたやってくる。まるで雨後の筍。一週間前に逮捕したやつが、またキャッチをやっている、なんてのもザラ。取り締まったという見せかけだけじゃないか、こう思われても仕方がない」

 こう語るのは、警視庁の捜査関係者。今年10月、8~9月にかけて上野の繁華街で悪質な客引き行為を繰り返したとして、警視庁はキャッチの男ら3人を逮捕した。こうしたキャッチが「迷惑防止条例」違反容疑のなかでもより罪が重くなる常習容疑で摘発された全国初のケースであり、その後、関西などでも悪質なキャッチが逮捕される事例が続出。東京だけでなく、全国に「キャッチ」が存在することも明らかになった。

 ただ、こうした当局による締め付けが、キャッチを撲滅させそうかと言われると、実情はそう簡単でもなさそうだ。

 東京都内の繁華街を転々としながら、今も“キャッチ”で生活費を稼ぐ現役大学生・槙野氏(仮名・23歳)は、逮捕された経験はないものの、キャッチが減らない理由について次のように証言する。

「とにかくギャラがいい。いろんな契約形態があるが、自分は店と直接契約を結んでいるっすね。キャッチして、その客が使った2~3割程度がバックされる仕組み。だから、出来るだけ人数が多い客を狙います。一晩で5組キャッチすると、大体3万は稼げる。学生のバイトもいれば、昼職やってるサラリーマンが小遣い稼ぎにやってる場合もある。レギュラー(毎日)の先輩が一度パクられましたが、二日間留置所に入り、処分保留ですぐ出てきた。今も元気にキャッチやってますよ(笑)。出来るキャッチは、実は店側からも重宝されてるんです」

 確かに、日給3万円の仕事はなかなかない。毎日キャッチとして街に立ち、月に100万以上の収入を得ている先輩もいるという。また、週に二日ほど、夕方から深夜にかけて数時間キャッチするだけで、一般的なアルバイトの一ヶ月分を稼ぐ者もいて、その効率の良さが、キャッチへ流れる人々を魅了しているとも話す。

 とはいえ、逮捕はリスクではないのか。キャッチ男は店側から感謝されていると、違法な仕事の継続を正当化するような口ぶりで、逮捕された同業者が明らかな“違法行為を行っていた”という事実については、知らんぷりを決め込んでいるかのようだ。一方、上野・仲通商店街の飲食店関係者は、キャッチが関わる飲食店について「キャッチありきでやっているとんでもない店が多い」と憤る。

「キャッチが関わっている店は、“今では”あからさまではない“プチぼったくり”の店が多いんです。そもそも店とキャッチが結託しているから、客に出来るだけ多く支払わせようとする反面、ビールだと謳っているのに発泡酒だったり、メニュー単価が近隣店の1.5倍ほどだったり……。もちろん、メニューの質も著しく悪く、残り物を使いまわしたり、衛生管理が適当だったり酷いもんです」(飲食店関係者)

 かつては、キャッチが正当に店から必要とされていた時もあった、とも語るこの関係者。表通りに面していない飲食店が、キャッチ業者にお願いをして、客を連れてきてもらっていた時期も、極めて短期間ではあるがあったのだという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン