山田太一脚本のNHK『男たちの旅路』には1977年の第二部から出演。鶴田浩二扮するベテラン警備員を取り巻く若手警備員役を水谷豊、桃井かおりらと共に演じている。
「最初に鶴田さんに挨拶した時は、『知らねえな』の一言だけ返されて終わりました。それで目を離さずに『柴と言います。頑張ります』と食い下がったんです。後になって鶴田さんには『お前、そのギョロッとした目で俺を睨めつけてきたな』って笑い話で言われましたが、それでないと負けちゃいますから。
鶴田さんのセリフは強烈でした。聞いていて引き込まれてしまう。どんどん『そうだな』と思えてきてしまって。僕が演じるのは鶴田さんに反発する役なので、それではいけないんですが。豊とかおりは『それは違うんじゃないか』という感覚をちゃんと持っていましたね。
豊とかおりを見ていると、こういう役者が伸びるんだと思いました。芝居がエネルギッシュで。僕はつい客観的になって引っ込んじゃう。これは役者としての欠点だと思います」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年12月22日号