◆重要なのは選手の周辺に食い込むこと

〈五輪にかかわり、広告表現等で選手の肖像権を使うことは簡単なことではない。選手個人との契約に加え、JOCとの契約が必要なのだ。北京五輪後、いくら北島が使ったとはいえ、同社の商品が爆発的に売れることはなかった。だが、高岡氏は自社製品を使った選手が金メダルを獲得する興奮が忘れられなくなってしまった。そこで、さらにスポーツ界に食い込むことを決めたのだが、日本スキー連盟にコンタクトを取った。そこで、モーグルの上村愛子に使ってもらった。ここから輪が広がっていく〉

高岡:上村さんのコーチが浅田真央さんのコーチと知り合いで、浅田さんにも使ってもらうことになりました。しかし、重要なのは、選手本人を応援するってことは、彼らをサポートする人たちも応援すべきということです。それは、トレーナーやドクターなので、彼らの分のマットレスパッドも用意しました。トレーナーって選手以上に体に敏感なんですよ。いいものか悪いものかの判断がガチっとしています。私は北島さんのマッサージ師やトレーナーとも仲がいいのですが、やはり選手をサポートする人を起点とし、選手に効果を実感してもらいたいと考えています。

 そんなこんなで地道にその効果を認識してもらい、2011年、バンクーバー五輪の翌年に浅田さんとはスポンサー契約を結びました。その時すでに浅田さんはユーザーだったのです。錦織さんも2009年からユーザーでしたが、ユーザーである人に契約のお願いに行くと、彼らも受け入れやすいんですよね。

 契約が成立したとなれば、浅田さんを起用している以上「オリンピック」という言葉を使いたいじゃないですか。スポンサーは選手を応援しなくてはいけないという義務があります。2012年、ロンドン大会の頃からは「いずれ五輪のスポンサーを取ろう」という決意をし、広く色々な団体にアプローチをし、エアウィーヴを供給しました。

 ただし、守っていることは、商品を渡し、気に入ってもらったら肖像権をお借りするために対価を払う、という姿勢です。基本的には競技団体にアプローチをし、商品の説明をする。当社のマットレスを使った効果については、2017年の流行語大賞トップ10を取った「睡眠負債」を提唱した一人として知られるスタンフォード大学の西野精治先生も有用な結果を発表しています。そういったデータも活用し、競技団体には選んでもらえるようにしています。

――競技団体との接点を持ったら、次はJOCですが、それはどのようにやるのですか?

高岡:JOCに対しては、各団体にコンタクトを取っていることを明かしたうえで、商品提供をしていることや、関係者とも連絡を取り睡眠の重要性についての情報交換などをしていることも伝えました。まだスポンサーではないため、権利を侵害しない形で活動を続けているということを伝え、「いつか五輪にもかかわらせてください」という空気を作りました。2011年7月には文科省の『チーム「ニッポン」マルチサポート事業』のコンディショニング用品として、150名以上のトップアスリートに提供をするなど下地を作りました。そして、五輪のスポンサーをするべく、JOCに正式にアプローチを開始するというわけです。

 実はこの時期、同業のライバル企業が150人のアスリートにマットレスを提供していたという情報がTVで流れたのですが、これは明らかに事実と異なります。JOCは「あれって本当はエアウィーヴだよね?」とも言ってくれたため、某テレビ局に抗議をし、7月にプレスリリースを出して実際に当社がロンドン五輪のアスリートにエアウィーヴを提供したことを発表したのです。

 ここで我々も本格的にやってやるか、と火がついたところがあり、ライバル企業があんなことをしなければ今五輪のスポンサーになっていないかもしれません(笑)。2016年には2020年までの東京2020大会オフィシャルパートナーとしての契約を締結し、今に至っています。やはりアスリートを支援し、あとはオリンピズムを体現するという責任を持っていなくてはスポンサー契約はできないと考えておりますので、地道な活動が実を結んだのではないでしょうか。

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