現在は、モンゴルで自らの銀行を持つほどに財界人な元横綱。現役時代の筋骨隆々の肉体美は、当然失っている。

 1人目のチャレンジャー、元フランス外国人部隊・久保昌弘は「現役の時の朝青龍見ているので、もっとすごいの想像していました」と本人を眼前にイキった。

 しかし、取組では瞬殺。身体を持ち上げられ、土俵に叩き落とされた。

 個人的に、久保昌弘に対する期待値は高かったのでショックを受ける。相撲とは力自慢ではなくテクニック、相撲経験者以外は勝ち目がない。そんなことが一目で理解できる実力差。

 それ以降、6人続いた挑戦者。誰一人として、朝青龍とまともに組み合うこともできない。圧倒的な力の差を見せつけられ、身体を土で汚すばかり。

 肉体は変わったが、現役時代から変わらないのが「朝青龍らしい」独特のふてぶてしさ。横綱の品格からは程遠い、モンゴルのやんちゃ坊主感はキープ。

 ある挑戦者の攻撃が目に直撃しブチギレ。取組後、腫れた自身目の写真とともに「目にパンチくらわしやがって 火が付いた!!」とツイート。

 最後の第8戦の対戦相手は、プロ野球賭博問題で相撲界を去った琴光喜。朝青龍と同様に、自らの意思ではなく力士を引退した男だ。

「土俵に残してきたモノはある」と語る両人。がっぷり四つを組み合う姿は、確かにドラマチック。

 今まで見ていたのは“相撲のようなもの”だったと確信させる取組内容。4時間以上”煽りVTR”を見続けたゆえ、感動もひとしお。

「違う!」正直に書こう。

「感動した!」とでも思わなければ、やってられない番組であった。「紅白見れば良かった」と自らを攻めたくなる出来だったんだ、正直。

 長時間の“煽りVTR”を見続け「久保昌弘は牧場勤務」「琴光喜が今焼肉店を営んでいる」「泉浩が週6日、魚市場で働いている」といった情報を得る。

 自分にツッコミたくなる「そんなこと知ってどーすんの?」

 結果、琴光喜戦の頃合いには“煽りVTR”で情報酔い。飲んでもいないのにヘロヘロに疲れていた。

 再度書く、本質である“朝青龍の取組”は素晴らしい。しかし、過度な情報を与え続ける“煽りVTR”が長過ぎる。

 放送終了後、録画していた紅白を見て意外なコトに気づく。

「やっぱり、朝青龍を見ていて良かった!」

 美男美女が戯れる派手なお祭り騒ぎを目にし、自分自身の人生を悲観してしまった。「芸能人はいいなぁ、楽しそうで、比べて僕は……」と。

 比べて『朝青龍を押し出したら1000万円』は、悲しくならないだけまだマシ。それこそ、皆心に傷を持つ者ばかりが集まる、僕たち敗者達の宴。

 男たちの無念を朝青龍は、がっぷり四つで受け容れてたんだなぁと気がついた新年であった。

 ※本コラムはイーグルスの「デスペラード」を聞きながら読むと10倍楽しめます。

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