「新しい薬」ではなく、「新しい薬の運び方」に着目した画期的ながん治療が「ナノマシン」だ。
片岡一則・東京大学大学院工学系研究科教授らの研究グループが開発したもので、直径数十ナノメートル(10億分の1メートル)の極小カプセル「ナノマシン」に抗がん剤を入れて、がん細胞に直接到達させる。この“配達方法”は「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」と名付けられている。
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「現在の抗がん剤の最大の課題は、がん細胞をピンポイントで攻撃できず、正常な細胞も攻撃してしまうために様々な副作用が生じることです。DDSの技術向上でこの課題をクリアすれば、がん治療は飛躍的に向上します」
がん細胞は発生すると、増殖するために血液から栄養を取り込もうとして、自らの周囲に血管を寄せ集める。ナノカプセルはこの血管の隙間から侵入して、がん細胞に直接働きかける。
「『ナノマシン』といっても機械仕掛けではなく、カプセルはアミノ酸とブドウ糖でできている。そうすると、体内で異物と認識されにくくなるといわれています。別の研究として、日本では日本化薬のものが開発の最終段階です」(同前)
※週刊ポスト2018年1月12・19日号