「押尾川」は尾車部屋(二所ノ関一門)のベテラン力士・豪風(前頭13)が、「秀ノ山」は佐渡ヶ嶽部屋(二所ノ関一門)の元大関・琴奨菊(前頭2)、「安治川」は先場所幕内に返り咲いた伊勢ヶ濱部屋の安美錦(前頭10)が所有する。
「残る『間垣』は時津風部屋に所属した元小結・時天空の遺族が、最後の『熊ヶ谷』は元十両・金親(2015年、暴行事件で協会解雇)の所有とされています」(同前)
これら空き株が、借株として理事選における「1票」に変わっていくことで、協会の勢力図が少しずつ書き換えられていくのだ。
「執行部が警戒するのは『秀ノ山』と『間垣』の行方です。前者は所有する琴奨菊の師匠である佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)が貴乃花親方に近いし、昨年1月に悪性リンパ腫のため37歳で亡くなった時天空も、師匠だった時津風親方(元前頭・時津海)は貴乃花グループとみられています。この2つの空き株が貴乃花親方サイドの『1票』に変わることを八角理事長陣営は全力で防ぎにいくはず。初場所の土俵なんかに、構っている暇はないのです」(同前)
空き株に限らず、借株が存在することで情勢はより混沌としてくる。幕内上位の力士が、引退前に年寄株を取得し、その株をすでに引退した元力士に貸すケースもあるのだ。
「田子ノ浦部屋(二所ノ関一門)の横綱・稀勢の里が所有する『荒磯』は、元前頭・玉飛鳥が借株として襲名し、同じ一門の片男波部屋の部屋付き親方となっている。こういうふうに同じ一門内での貸し借りなら話はシンプルだが、一門をまたいだ貸し借りは意図が訝られることになる。
たとえば八角理事長(元横綱・北勝海)のいる高砂一門に属する九重部屋の千代鳳(幕下9)が所有する『佐ノ山』は、時津風部屋の元前頭・土佐豊が借株で襲名して部屋付き親方になっている。時津風親方と貴乃花親方が近いとされるため、そのパイプは九重親方(元大関・千代大海)にもつながっていると考えられるわけです」(協会関係者)
※週刊ポスト2018年1月26日号