急速に台頭する中国と緩やかに衰退する米国が激しくせめぎ合うのが朝鮮半島だ。文在寅大統領の誕生後、中国に急接近した韓国は米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の追加配備を容認しないなど「3つのノー」(※注)で習近平に秋波を送った。
※注/昨年10月の中韓首脳会談で交わしたとされる3つの合意。(1)THAADを追加配備しない(2)米国主導のミサイル防衛に参加しない(3)日米韓の連携を軍事同盟に発展させない、の3点とされる。
極東で中国が韓国を手中にして、「日米韓の連携」が崩れることは、日本にとってもはや、足元の脅威である。そしてさらなる悪夢を予感させたのは、2017年11月の米中首脳会談だ。
トランプ政権の誕生時、日本の「安倍応援団」と呼ばれる一部保守派の論客やメディアは、「彼なら中国に強硬に出て抑え込んでくれる」と手を叩いた。クリントン、ブッシュ、オバマと中国に“甘い”政権が続いた後、「ついに本格的な対中強硬政権が登場した」と歓迎したのだ。
だが期待は無残に裏切られる。首脳会談でトランプは、習近平を「世界的指導者のひとり」と持ちあげ、中国が唱える「米中新型大国関係」を受け入れる姿勢を示唆した。日本の保守派は深く落胆した。
◆金融市場と南シナ海をディール
だが、米国の「政権の本質」と「国益の構造」を理解していれば、米中両大国の接近は予測されたことだ。
米国の対中戦略を支える柱は2つある。ひとつは外交・安全保障で、ワシントンの国務省、国防総省が担う。もうひとつは金融で、ニューヨークのウォール街が主役となる。