これは、腸内フローラのバランスのよい健康な人の便を医療用生理食塩水に溶いてろ過し、液体を注射器によって患者の大腸内に内視鏡などで注入する治療法だ。海外では肥満治療や、院内感染による下痢の疾患(クロストリジウム・ディフィシル感染症)などに効果があるとの研究結果が出ているが、日本では保険治療として認められていない。
現在は難病の潰瘍性大腸炎を対象として、慶應大学や順天堂大学など一部の医療機関で自由診療で移植が行なわれている。
腸内細菌から作られる物質を用いた健康法もある。協同乳業研究所・技術開発グループ主幹研究員の松本光晴氏が言う。
「腸内細菌が作り出す物質ポリアミンの一種であるスペルミジンには、細胞の状態を正常に保つ働きがあり、アンチエイジング効果があります。古くなった細胞のたんぱく質を分解して自食する『オートファジー』を活性化する効果や、細胞の突然変異を抑える効果もあり、認知症やがんの予防も期待できます」
米国のテキサスA&M大学の研究チームがマウスにスペルミジンを投与すると、寿命が約25%も延びた。
「私がテレビの企画で『きんさん、ぎんさん』の蟹江ぎんさんの五女で、現在94歳ながら元気に暮らす蟹江美根代さんの便を調べたところ、平均の2倍ものスペルミジンが観測されました。長寿の方の腸内で多くのスペルミジンが生成されている可能性を示している」(松本氏)
スペルミジンはチーズやみそなどの発酵食品に多く含まれる。中でも「納豆」の含有量が多いとされる。腸内フローラを整える上で大切なのは、自分の腸内細菌の状態を知ることだ。