芸能

鹿賀丈史 映画の新人を温かく迎えてくれた松田優作の思い出

松田優作の思い出を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・鹿賀丈史が、劇団四季を離れて映画に挑戦してまもなく、『野獣死すべし』で松田優作の相手役を演じた当時について話した言葉を紹介する。

 * * *
 鹿賀丈史は1979年に劇団四季を退団、活躍の場を映像の世界に移す。その第一作となったのが、1980年の松田優作主演映画『野獣死すべし』だった。

「四季で『カッコーの巣をこえて』に出た時に芝居の面白さに目覚めまして、映像もやりたいと思うようになったんです。ちょうどその時に黒澤明監督の『影武者』のオーディションがあったのですが、劇団のスケジュールと重なって受けられませんでした。そういうこともあって、劇団を離れて映画に挑戦してみよう、と。二十九歳の時に退団しました。

 それで『野獣死すべし』の話をいただいて。松田優作さんというトップスターの相手役ですから、『ジーザス・クライスト=スーパースター』の主役に抜擢されたのと同じで、いきなり大きなチャンスに恵まれました。

 あの時は怖いもの知らずでしたね。優作さんの芝居に自分なりに対抗しようとしていました。でも、優作さんはカメラさん照明さんから、全て自分に引っ張っていく。自分で作品を作っていく。そこは大俳優ならではです。自分でセリフも直していました。そういうのは舞台ではないことなので、驚きましたね。

 優作さんと二人で芝居を作り上げる場面も多かったですが、『お前なりに好きにやれ』という感じでした。ただ、たまに『そういう芝居は損だからやめた方がいいよ』とボソッと言ってくださったり。そういう意味で、映画の新人を温かく迎えてくれましたね。自分が劇団四季で勉強してきたことを引っ張り出してもらったように思います」

 翌1981年の篠田正浩監督『悪霊島』では主人公の名探偵・金田一耕助を演じている。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン