「制圧」と言っても、悲惨な実態はまだまだ存在する。読者は著者の同行記によって、その現状をつぶさに知ることができる。しかし、少なくとも読後私に残るのは、ライ(あえてそう呼ぶ)という現象は人類史上、一体何であったかという、重いわだかまりである。

 著者は巻末に「ハンセン病と人間」という長文の一章を配して、委曲を尽くした考察を行っており、これを読むだけでも、本書を購(あがな)うに値する。北条民雄の一生を叙した『火花』の著者ならではの、重いしかも醒めた考察である。

◆わたなべ・きょうじ:1930年京都生まれ。大連一中、旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。日本近代史家。熊本市在住。『逝きし世の面影』で和辻哲郎文化賞、『黒船前夜』で大佛次郎賞を受賞。著書に『北一輝』『評伝 宮崎滔天』『もうひとつのこの世《石牟礼道子の宇宙》』『近代の呪い』『万象の訪れ《わが思索》』『幻影の明治』『無名の人生』『気になる人』など多数。最新刊は『バテレンの世紀』(新潮社刊)

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