2015年にちょい飲み需要の受け皿として登場したのが「吉呑み」だ。今までもアルコール類は提供していたが、「ビールは3本まで」などとどちらかといえば食事をする場所である、という雰囲気を漂わせていた吉野家。
夕方の時間から本格的にちょい飲み需要の取り組みを開始した。厨房設備の関係から、軽めのおつまみと締めの牛丼が定番コース。駅前立地の多い吉野家の店舗は、帰宅前のちょい飲みにはぴったりのシーンを提供してくれる。
牛丼(並盛り380円)を食べながら、生ビール(ジョッキ350円)を嗜む。紅ショウガだけでも十分なアクセントとして存在感を発揮するが、ビールは牛丼とともに喉の奥に次々に消えていく。
意外にグラスビール(180円)も人気の商品だ。ビールと牛皿、またはビールと牛煮込み(350円)に牛丼を加えても1000円でおつりがくる計算だ。ひと昔前に流行った“せんべろ(1000円でべろべろに酔える)”とまでいかないかも知れないが、吉野家でも可能な価格帯。コスパだけでなく、満足度も高い印象を受けた。
有楽町駅前にある2店の吉野家は、1店舗は吉呑み提灯が下がっているが、ごく至近にあるもう1店舗は提灯がない。当然ながら、提灯の下がっていない店舗は、お客様の回転が高い。食事をメインにするのであれば、提灯のない店舗を選択することもありではないだろうか。
恵比寿店では、吉野家らしくないちょい飲みも可能。生ビールとから揚げ(3個360円)の組み合わせも注文できる。明るい店内と広くゆったりとした空間の中で、から揚げをつまみにビールを飲む。なんて吉野家らしくない雰囲気。同店舗にはカウンターは存在しない。入口右手のカウンターで注文し、先の窓口で商品を受け取る。いわゆるセルフサービスの形態だ。意外にも女性客の姿も見受けられる。これも吉野家らしくない、と感じた一因かもしれない。
吉野家が新しい店舗戦略として打ち出しているのは「女性も入りやすい」店舗。恵比寿、五反田、秋葉原、大井町などに新しいコンセプトで店舗を設定している。それぞれの店舗形態・サービス形態が同一でなく、吉野家も試行錯誤している様を見ることが出来る。これからの吉野家を占うつもりで来店してみると面白い。
恵比寿と大井町の店舗はセルフサービスを基本とし、喫煙スペースを確保している。受動喫煙防止の観点から、男性女性を問わず喫煙可能な店舗が少なくなっている中で、喫煙スペースの設置は試行錯誤の一つなのだろう。
キッチンスペースの見直しにより、他の店舗と異なり「揚げ物」が提供可能となっている点も強みだ。取り扱う品目が増えることは、消費者から選ばれる機会も増えることだろう。大井町店では夕食に力を入れている。とんかつ定食も提供しているため、家族連れで来店している風景も見ることができた。
いろいろな店舗展開を試みながら、提供する商品を拡充しつつある吉野家の吉呑み。店舗によりおつまみメニューが異なるので、店舗をはしごするのも楽しいと考えられる。