本誌の取材に回答はなかったが、山口氏以外にも、中国メディアでは多くの日本人学者が登場している。
北京大学出身で朝日新聞に籍を置いた経歴をもつ工学院大学孔子学院元院長の西園寺一晃氏は、新華社の取材に、〈日本は広島長崎で毎年原爆の記念活動をしている。これも必要なことだが、どちらかというとそれよりも南京大虐殺や731部隊の歴史のほうが忘れてはならないのだ〉と述べている(2017年8月24日付)。
慰安婦問題を扱ったCCTVの番組(2017年8月14日放送)では、日本の戦争責任問題などが専門の山田朗・明治大学教授が〈日本は明治以降、中国蔑視を開始した。それゆえ、中国を侵略することについては何も間違っていないと考えた。こうした価値観のもとに行われた戦争は、まったくでたらめで残忍なものだった〉という歴史観を語っている。
こうした特定の歴史観をもつ学者が、中国メディアに重用される実態が浮かび上がる。
中国メディアは権力を批判・監視する機関ではなく、人民に対する宣伝機関であり、それに協力することは中国人民を不幸にすることだという認識が必要だ。
※SAPIO 2018年1・2月号