国内

異常な数の動物を飼育してしまう“アニマルホーダー”の病理

保護された猫は警戒心が強く人に近寄らない

 日本は空前の猫ブーム。ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査(2017年)によると、犬の飼育数は892万匹、猫は952万匹。調査開始以来、初めて猫が犬を上回った。

 猫は散歩が不要で、鳴き声などの騒音の心配もなく、飼育にかかる費用も一般的には犬に比べて安い。高齢化や核家族化、共働き世帯の増加が進む日本において、この手軽さが人気の理由だ。

 しかし、飼育のハードルの低さは1つの“病”も生み出していた。それが『アニマルホーダー』である。NPO法人ねこけん代表理事の溝上奈緒子さんが指摘する。

「異常な数の動物を集めて飼育してしまう人のことで、日本語では『過剰多頭飼育者』と訳します。対象は動物全般ですが、圧倒的に猫が多い。彼らは、動物を囲って自分の支配下に置き留めることが、動物のいちばんの幸せと信じ込んでいます。そのため、外で野良猫を見つけるたびに、『かわいそう』と感じて連れ帰る。それを繰り返すうちに家の中でどんどん繁殖し、飼育費がかさんで本人の手に負えなくなる。結果、自分の生活まで崩壊していくのです。

 アニマルホーダーは、自分が普通ではないことに気づいていません。1匹、1匹と増えていくうちに、命ある動物を飼っているという意識が薄れてしまう。また、アニマルホーダーになる人は、社会から孤立した高齢者に多いといわれています。孤独感から動物への依存を強めていくのだと思います。高齢化が進むにつれて、今後このケースは増えていくと思います」

 2016年の国勢調査によると、65才以上の高齢者は3342万人。うち562万人は単身世帯である。アニマルホーダーはどこにいても不思議ではない。

 多頭飼育に陥る人の中には、貧困者が多く、不妊去勢手術の費用を捻出できないケースも目立つという。

「そこで昨年4月、無料で不妊去勢手術を行うクリニックを設立したのですが、手術の当日になって『面倒だから』とキャンセルする人が非常に多いんです。手術をしないと、猫はすぐに繁殖してしまいます。こうした自分本位で時間や約束にルーズな人間性のかたは、多頭飼育崩壊に陥る傾向が強い気がします」(溝上さん)

 周りにいる人が気づくべきだが、特に猫の場合、鳴き声などが近隣に響きにくいため、察知しづらい。

「過去、東京都練馬区の一戸建てで、49匹の猫を保護したことがあります。この時も近隣や親戚だけでなく、隣に住んでいる人でさえ、多頭飼育に全く気づいていませんでした」(溝上さん)

 1度アニマルホーダーに陥ると自力での解決は難しく、行政やボランティア団体などの手を借りなければ、完全な克服は難しい。過去に猫18匹を飼い、生活が立ち行かなくなった都内在住のA子さん(29才)が、自身の経験を振り返る。

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン