「看護師の仕事で不規則な日々を送る中、唯一の癒しがペットの愛猫でした。最初はラグドールを2匹飼っていたのですが、気づいたら交配してしまって…。多忙で獣医にも行けず、子供が子供を産み、気づけば部屋中が猫だらけ、という状態でした」
A子さんの暮らす1LDKのマンションは、瞬く間に汚部屋と化し、異臭騒ぎで住人からクレームが殺到。大家から退去通告を受けた際、「あなた、これ病気よ」と真顔で言われ、われに返ったという。
「アニマルホーダーについて書かれた記事を渡され、読んでみたら私のことだ、と。『猫の飼育をやめないなら行政代執行で退去してもらう』と言われましたが、これまで家賃の滞納はなかったので、温情も示してくれて。動物愛護センターやボランティアなどの猫の受け入れ先や、精神科医を紹介してくれたんです。
カウンセリングを受けてみて、改めて猫にひどいことをしていたのだ、と自覚しました。幸いなことに、18匹全ての引き取り手も見つかり、強制退去は免れました。相当なショック療法でしたが、あそこまで話が大きくならなければ、今も生活が崩壊したままだったと思います」
多頭飼い状態にならないためにはどうすればよいのか。溝上さんは語る。
「まずは、必ず不妊去勢手術を猫に受けさせてほしい。譲渡するボランティア団体も、猫を販売するショップやブリーダーも、あらかじめ手術を行ってから飼い主に渡してほしいと思います。
『ねこけん』では、不妊去勢手術をした猫しか譲渡しないようにしています。譲渡の際には、全ての保護猫に必要な医療処置や、飼い主情報等を記録したマイクロチップを埋め込み、その子が天寿を全うするまでフォローします。時間も労力もかかりますが、このような取り組みが多頭飼育崩壊の防止に役立っているのではないかと思います。
多頭飼育崩壊でレスキューした猫たちを、崩壊者と会わせるという取り組みもしています。それまで『返してほしい』の一点張りだった崩壊者も、新しい環境でも猫たちが幸せそうにしていることが徐々にわかり、手放すことに納得していくんです」
猫の保護をしている川崎市動物愛護センターの小倉充子所長が語る。
「引き取った猫はワクチンも打つなどし、すっかり健康になります。ただ、やはり人に触れられることに慣れていないため、両手で抱えると不安そうな顔をするんです。警戒心も強く、決して人間に近づこうとしない。かわいそうで見ていられません」
動物愛護法違反は最長でも懲役2年。罰金で済むケースも多いという。
※女性セブン2018年3月15日号