「異常混雑予報では、当日から5日後までの未来を予測できますが、これはSNSなど約4000万人分のデータを収集し、それを基にして混雑度を解析しています。5日前から混雑する路線や駅を察知できれば、『週末は○○駅が混雑するみたいだから、別のルートで行こう』とか『明日は、イベントの影響で××線が混雑するみたいだから、座って帰りたいし、早めに仕事を切り上げて退社しよう』といったように、自分の行動計画を組み替えることができます。異常混雑予報によって、電車移動の際のイライラを解消し、快適でスムーズな移動ができるようになると考えています」(高橋さん)
電車の遅延情報などは、各鉄道会社が公式ツイッターアカウントで迅速に対応するようにもなっている。これら、公式アカウントによる事故情報・遅延情報などは、最近では事故発生から1~2分後には情報がツイートされる。そのため、ツイッター検索で情報を得ている利用者は少なくない。
しかし、公式アカウントからは未来の情報までは得られない。あくまで”過去”に起こった事故や遅延、”現在”の運行情報のみが発信されているに過ぎない。
「Yahoo!乗換案内」では、4000万人にもおよぶ膨大なビッグデータを解析。そこから未来の情報を弾き出すことは、これまで時刻表検索や乗換案内にはなかった新しい機能だ。異常混雑予報はビッグデータをAIに学習させることで、今後はさらに情報精度を高めることを目指している。
「Yahoo!乗換案内」が異常混雑予報を実装して機能強化を図った一方、「駅すぱあと」は、違った方向に力をシフトさせている。ヴァル研究所は開発を手掛ける「駅すぱあと」は、日本初経路検索ソフト。「Yahoo!乗換案内」よりも老舗で、今年はサービス開始から30周年を迎える。
インターネット黎明期より、「駅すぱあと」は鉄道会社と密接な関係を築いてきた。当時は、鉄道会社に訪問して話を聞き取り、それを反映させていたこともあるようだ。そうした現場訪問を通じて培った鉄道会社との信頼関係を活かし、「駅すぱあと」は2016年に「駅すぱモール」というECサイトを開設。
同サイトでは、鉄道会社が販売しているオリジナルグッズや沿線の特産品などを販売しているほか、オリジナルヘッドマークをつけた列車の運行、一日駅長体験といった”コト”の販売まで力を入れている。
時刻表検索・乗換案内は、単なる交通機関の情報を提供するツールではなくなった。すでに、私たちのライフスタイルをも左右する力を持ち始めている。
時刻表検索・乗換案内アプリは、IT技術やデバイスの進化のみならず通勤スタイルの変化といった外的要因などによって、今後も新しい機能を追加していくだろう。これからも熾烈な開発競争は終わらない。