2015年12月、私はフリマアプリ・メルカリの「大掃除イベント」の記者会見に行ったが、千原ジュニアと当時ブレイクし始めていた「ぺこ&りゅうちぇる」のカップルが登場。
フリマアプリの実演に関心を持つ記者など少数派で、取材陣が狙っていたのは9月に結婚したばかりの千原の夫婦生活の様子と子づくりに関するもの。
結局記事の見出しも『千原ジュニア、同居ストレス解消でノロケるスピード離婚「ない」』(オリコンスタイル)のようなものがズラリと並んだ。
何かの発表をしても、主役は現在旬の芸能人ということになり、商品はどうでもいい。その芸能人に話題性が欠ける場合は、現在流行りのネタについてコメントを言わせる。以前、今いくよ・くるよが登場する商品発表会見の取材に行ったが、旧知の広告代理店マンから「(最近逮捕された)鈴木宗男氏とアホの坂田が似ているか? という質問を二人にしてください」と頼まれた。代理店マンもその商品単体、そしていくよ・くるよの当時の話題性では大きな扱いにしてもらえないと踏み、当時の大ニュースだった「鈴木宗男逮捕」と絡めることによってニュースバリューを高めようとしたのだ。
企画者からすれば、「商品が露出するのは難しいが、『○○株式会社の××の記者会見に芸人の◇◇が登場』という文言と、後ろのパネルのロゴが映ればいいんです」という発想である。
企業は頑張って商品を作っているが、「芸能人が来るんだったら会見に行く」というスタンスを見せてきたバカマスコミにより、商品発表会はくだらないものだらけになった。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2018年4月6日号