若い研究者が柔軟で独創的な発想をすることで新しい理論や技術が生まれていることは歴史が証明している。なのに、その若い芽を摘むような改革が長年行われてきたのだ。2000年以降、研究環境が急速に狭まってきているので、教育機関として大学が体をなさなくなってきている。研究できる大学が減っている現状から見れば、今後、これまでのようにノーベル賞を輩出するのが難しくなることは容易に想像できる。
◆日本の弱体化
ノーベル賞受賞者を輩出できないということは、科学技術立国として日本が弱体化していることを意味する。資源のない日本は、これまで科学技術立国でいられたからこそいまの地位を築き、維持することができた。それがなくなれば、先進国ではいられなくなる。
新しいものをつくれなくなることは社会のすべて、日常生活のあらゆる場面に影響する。ノーベル賞関連でいえば、2014年に日本の3氏が物理学賞を受賞した青色発光ダイオードにおいては、スマートフォンのバックライトや照明、信号機などにすでに広く活用されているし、2012年に山中伸弥京都大学教授が医学・生理学賞を受賞したiPS細胞は今後、新薬の開発や再生医療の分野で大きく貢献する可能性が高い。
にもかかわらず、日本では最先端人材へのリスペクトがあまりにもなさすぎると感じる。企業はイノベーションが必要で、そのためには能力があり、高等教育を受けた人材が必要だというのに、博士の採用に及び腰だという声も聞こえてくる。そういうことでこの先何十年とやっていけるのかと問いたい。さらに日本は高等教育を衰退させる改革、すなわち長い目で見れば日本の国力を衰退させる改革をいつまで続けるつもりなのか問いたい。