世界を見渡すと、科学技術の重要性の理解が非常に高まっている。中国は科学技術振興費を劇的に増やしていて、その規模は2000年を100としたとき、2015年には1121と10倍以上に伸ばしている。韓国も474と4.7倍に増やしているが、日本は106と現状維持のままだ。論文数で見ても日本は減少傾向で、人口が半分以下の韓国が日本に迫ってきている。こうした状況に危機感を持つべきだ。
今後、研究分野の広い裾野を確保するために、高等教育の在り方から議論し、最先端人材をどう輩出するかを考えなければならない。それには、多くの若い研究者に安定して自由に研究できる環境をつくっていくことが必要不可欠である。
●かじた・たかあき/1959年埼玉県生まれ。東京大学宇宙線研究所所長。埼玉大学で学んだ後、東京大学大学院へ進み、小柴昌俊氏や戸塚洋二氏のもとで宇宙線研究に従事、理学博士号を取得した。2015年「ニュートリノ振動の発見」により、ノーベル物理学賞を受賞。著書に『ニュートリノで探る宇宙と素粒子』(平凡社)。
■取材・構成/岸川貴文
※SAPIO2018年3・4月号