一九五二年、二十一歳で第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を出版し、世に出た。
谷川の詩の特色は、飼っている犬とか、食卓風景といった日常風景を語りながら、言葉がいつのまにか遠い宇宙とつながってゆくこと。近景が遠景へと変わる。私小説と寓話が溶け合っているといえようか。
その点で、谷川俊太郎と村上春樹は似ていると論じるところは新鮮。尾崎真理子の読書の広さ、読みの深さに感服する。
谷川俊太郎には、どこか「詩人であること」に対する照れ、恥らいがある。普通の生活者に比べ、詩人のどこが偉いんだという自嘲がある。威張っていない。谷川俊太郎の詩が多くの読者に、一貫して愛され続けているのはそのためだろう。
『詩人なんて呼ばれて』という書名にも、この詩人ならではの恥らいが出ている。
◆文・川本三郎
※SAPIO2018年3・4月号