「たしかに福田事務次官がとんでもない発言をしてるかもしれないけど、そんなの隠し録っておいて、テレビ局の人が週刊誌に売ること自体がはめられてますよ。ある意味、犯罪だと思う」
この3つのコメントは強弱は違うが、まったく同じことを言っている。つまり、「セクハラを録音したテープを週刊誌で告発した女性は悪者」ということだ。
あまりの見識の低さに愕然とするが、日本の社会には本気でそう思っている大メディアの報道局長や“大物政治家”がいるのも事実だから、どこがおかしいのか明確にしておく必要がある。
1つは、福田次官とAさんの会話は、「取材活動ではない」ということ。「取材」とは、「質問と回答がある」ことが大前提だ。Aさんが質問したことはたしかだが、福田次官は回答しておらず、取材はまったく成り立っていない。どこの世界に、「おっぱい触っていい?」「浮気しようね」というバカげた回答があるのか。このテープに録音されているのは、ただの「性的嫌がらせ」であり、取材活動でも何でもない。もしテレビ朝日が「これが自分たちの取材のやり取りだ」と胸を張るなら、日常的にどんな取材をしているのか、気になって仕方ない。
もう1つは、犯罪行為や反社会的行為、社会規範に照らして逸脱した行為を目の当たりにしたジャーナリストが、もし自社の媒体で報じられないとなったとき、それが社会的に報じられる価値があるならば、ありとあらゆる手段で報じようとするのは、ごく当然の行為だ。週刊誌でも、新聞でも、テレビでも、SNSでも、動画サイトでも、手作りのビラでも、何でもいい。報じられるべき事実を「ウチの会社じゃできないから闇に葬ろう」というのが、ジャーナリズムなのか。それではただの“御用聞き”だ。
テレビ朝日の会見に出席した日本テレビの男性記者は、「この音声の提供に際して、いわゆる謝礼金みたいなものが発生しているのかどうか」と質問した。謝礼を受け取ろうが、受け取るまいが、「福田次官のセクハラ発言」という事実は不変だ。記者は「Aさんはカネ目的で福田次官をハメた」と貶めたかったのだろう。これが日本の記者のレベルだ。(念のために、Aさんは謝礼を受け取っていないという)
「告発した女性が悪い」と言い立てるのが日本社会の現実だ。女性が実名で声を上げられるはずがない。
※女性セブン2018年5月10・17日号