ライフ

牛丼チェーン 「新メニュー導入」と「値上げ」が相次ぐ理由

吉野家の「鶏すき丼」は並盛450円

 牛丼チェーン各社のメニュー動向は、われわれの生活に直結している。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が最新事情について分析する。

 * * *
「牛丼」がニュースで取り上げられるのは「値上げ」「値下げ」、そして「牛離れメニューと牛復活」のときと相場が決まっている。2001年にBSEによる牛離れがあって以降、各社とも新規メニュー開発や10円単位の価格調整に追われるようになった。

 それはサラリーマンや学生顧客の一喜一憂につながり、ネットやSNSをにぎわせる。そしてこの春も「松屋が値上げ!」「吉野家が塩鯖定食を導入?」と牛丼チェーンが値上げや新メニュー発表で注目を集めている。

 なぜこの春、新メニューの導入や値上げが目立つのか。その理由は、近年の牛肉相場の高止まりがチェーンの仕入原価を直撃しているからだ。

 去年6月、中国がアメリカ産牛肉の輸入を14年ぶりに解禁し、US牛の相場は一気に跳ね上がった。昨年4月に600円台だった牛バラ肉の卸売価格は1年間で2割以上高い800円前後に急進し、一向に下落の気配を見せない。各チェーンともこれまでのストックでやりくりしているが、いずれ安値で仕入れた肉のストックは底を尽く。

 吉野家、松屋、すき家の大手3社とも「アメリカ牛」の味わいを土台に組み立てている。今後は高値で仕入れた原料を土台とした、メニューや価格帯を考えなければならなくなっていた。

 昨年11月、真っ先に動いたのはすき家だった。「米国産牛肉の牛丼用部位の価格は前年同月比で42%上昇」「米の価格は前年同月比で9%上昇」を理由にほとんどのメニューで10―50円の値上げを行った。「牛丼 並盛」は例外的に350円という価格で据え置かれたが、そのほかのメニューは各種トッピングでさえも10円の値上げとなった。

 この春の先鞭をつけたのは、松屋の4年ぶりとなる値上げだった。4月3日に主に首都圏以外の地域で販売している「牛めし」の並盛り価格を290円から320円に引き上げた。さらに牛焼肉定食やカレーなども10~50円値上げ。ほぼ全面的な価格とメニューの改定を行った。

 首都圏を中心に約580店舗で提供される「プレミアム牛めし」も、大盛りを520円から530円へと10円の値上げ。特盛は630円から650円へと20円値上げされた。「たかが10円、20円なら値上げしなくても」という声もあるだろうが、逆に言うとそこまでぎりぎりの価格調整をしている。万一この先、さらなる値上げをせざるを得なくなったとき、上げ幅を小さく押さえることができるという利点もある。

 一方、松屋も「プレミアム牛めし」の並盛りの価格は据え置いた。380円という価格はすでに吉野家の「牛丼」並盛りと同価格。たとえ10円でも吉野家よりも高価格帯にはできなかったということだろう。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン