日本の場合、既存の原発のうち20基を延命して20年ほど使ったとしても、電源構成に占める原子力の比率は、せいぜい20%前後だろう。再生可能エネルギーの比率は太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱を合わせて最大30%程度。となると、残る50%は化石燃料に依存せざるを得ない。経産省が定めた「2030年度の電源構成目標」でも、原子力が20~22%、再生可能エネルギーが22~24%、化石燃料が56%となっている。しかし、化石燃料に50%以上頼るとなれば、CO2排出量削減の課題がある。
したがって、今後の打ち手は二つしかない。
一つは、化石燃料のCO2排出量を極端に減らしたり、化石燃料の発電効率を高めたりする研究開発の推進。もう一つは、電力消費量を20~30%削減することである。
たとえば、自動車業界では2030年以降、一気にEV(電気自動車)シフトが進むと予想されている。そうなれば、ガソリンで動いていた車が電気で動くようになるから、電力需要は大幅に増加する。そういう中で省電力化を進めるためには、国民投票で「原発NO」となれば電力消費量の30%削減を個人と企業に義務付ける、といった具体的な条件を付けることが必要になる。原発に反対して省電力化に協力しないのは無責任だからである。
国民投票は、国民がインテリジェントな意思決定ができるよう、正確なデータと情報、予想される選択肢をすべて俎上に載せた上で実施しなければならない。その役目は経産省にはできないと思う。担当者が約2年ごとに入れ代わるので知識と経験の蓄積がないし、時の首相に忖度した情報を官邸に上げるかもしれないからだ。調査は中立的な民間リサーチ機関に委ね、それを基に国民投票を行なって、全国民が主体的かつ真剣に今後のエネルギー政策を考え、決定すべきである。
※週刊ポスト2018年5月25日号